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【開催報告】国東半島宇佐地域世界農業遺産生物多様性シンポジウム
イベント・レポート

世界農業遺産認定地域での生物多様性の重要性や今後の取組について議論し、地域はもとより県民の皆さんに、改めて農林水産業と生物多様性のつながりを理解していただくとともに、生物多様性をどの様に保全していくかを検討するために生物多様性シンポジウムを開催しました。

開催概要

日時 平成26年2月8日(土) 10:00~15:00
場所 大分農業文化公園 (杵築市山香町日指1-1)
主催 国東半島宇佐地域世界農業遺産推進協議会
参加者 150名(内訳:生産者、生物多様性関係者、行政関係者、地域住民)

シンポジウム概要

林会長より、「自分たちの周りを見回して、自分たちの周りの生物多様性を感じて、それを世界に発信していくような機会になればよいと思っている」と挨拶がありました。
つづいて、ラムサールネットワーク日本の呉地共同代表、新潟県佐渡市役所の渡辺農林水産課長より、基調講演を頂きました。
パネルディスカッションは、世界農業遺産認定の年度に考える「国東半島宇佐地域のこれから」をテーマに、基調講演を行った呉地氏、渡辺氏と、国連大学サスティナビリティ高等研究所イヴォーン リサーチャー、および推進協議会の林会長の4名をパネリストに、日本文理大学の杉浦教授をコーディネーターに迎え、農業と生物多様性の取組について意見を交わしました。

基調講演1

【講師】

NPO法人 ラムサールネットワーク日本 共同代表  呉地 正行 氏

【演題】

生きものあふれる地域づくり
「田んぼの生物多様性向上10年プロジェクト」について

【要旨】
水田は農地であるだけでなく湿地でもあることを活かして、生きものの豊かさを回復させていくという、取組ができる。例えば、冬水たんぼを行うことで、害虫を食べるクモ等の田んぼの生きものが増え、生きものにとっては生育環境の回復、農業にとっては生きものの力を活かした農法、農業と自然の共生が可能となる。一番難しいのは、農業との共生であるが、共通のゴールを明らかにしたうえで、取組を進めるとよいのではないかと考えている。

基調講演2

【講師】

新潟県佐渡市農林水産課 課長  渡辺 竜五 氏

【演題】

世界農業遺産”佐渡からのメッセージ”
「世界農業遺産のねらいとエコ農業」

【要旨】
クヌギ林というのは、日本の誇る田園風景であるが、それがどんどん失われている。また、トキがいなくなった理由は、人間の乱獲と農業の仕組みがコストを優先するような仕組みに変わったことである。
そこで、人間のためだけの取組、トキだけのための取組では難しいとうことに気がついた。そこで、トキのためにではなく、認証制度、大手量販店との販売、生きものを育む水田農法など、農家のために取り組んできた。
ブランド化を進めるために、農家自身が自分の田んぼに何がいるのか消費者に対して説明出来るようにすることが、生物多様性の取組を進めることになる。

パネルディスカッション

【テーマ】

世界農業遺産認定の年度に考える「国東半島宇佐地域のこれから」
【コーディネーター】

日本文理大学工学部 教授 杉浦嘉雄 氏
【パネリスト】

4名

国連大学サスティナビリティ高等研究所リサーチャー イヴォーン・ユー 氏
生物多様性は、生きものだけでなく、種子などの様々なものも寄与している。農業の原点に戻ることで、生物多様性に繋がる。農業は食に関係しているので、これを機会に自分たちの食を見直す機会になるのではないか。日本食は世界遺産に認定されたが、その「うまみ」を支えるのは椎茸でもある。食を見直す活動ができると良いと思う。

NPO法人ラムサールネットワーク日本共同代表 呉地 正行 氏
地域住民が、世界農業遺産のシステムについてどういうものなのかということを、それぞれ明確にしていた方がよい。ホットスポットを設けて、全体のつながりを説明するようなところがあった方が、地域外から国東半島宇佐地域を見たときに分かりやすくなると思われる。

佐渡市役所農林水産課課長 渡辺 竜五 氏
生産者が森に入って木を切ること、森を守るために木を植えること、これが価値のあることとと考えてもらいたい。われわれ生産者が、この森・水・空気を支えていることが、世界農業遺産として認定されている、ということを消費者に伝えてもらいたい。このために、生産者自らが、森がどうなっているのか、どんな生きものがいるのか、それを知らないといけない。だから知ると言うことが大切である。ここを努力することで、消費者に胸を張って椎茸の価値を言うことができると思う。

国東半島宇佐地域世界農業遺産推進協議会会長 林 浩昭 氏
生物多様性は難しいと考えていたが、身近なところで、既に、小学生や高校などにおいて、世界農業遺産に認定される前から様々な形で活動が行われていたことに気付くことができた。
例えば、椎茸のために水たまりを作ったり、水田のためにため池を作ることが生物多様性に寄与しているという事を忘れずに、農林水産業に取り組んで行くことが大切ではないかと考えている。

シンポジウム会場
会場の様子
杉浦教授(左)、林会長
(左より)イヴォーン氏、呉地氏、渡辺氏

 

 

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