MEGURU
香り豊かなしいたけの魅力、再発見
森
自営業のしいたけ生産に魅力を感じ、脱サラして家業へ
薄日が射す林の中に、美しく組まれたクヌギのほだ木が並ぶ。
晩秋まで手入れをしながらしいたけの発生を待つほだ場だ。
清末隆文さんと弟の健二さんは、国東市安岐町で祖父の代から続くしいたけ作りを、両親とともに受け継いでいる。
隆文さんは元会社員、健二さんは料理人だったが、自営業のしいたけ生産に魅力を感じ、脱サラして家業へ。
県内の生産者の平均年齢が70歳を超える中、清末兄弟は期待の若手だ。
大分県は乾しいたけ生産量が日本一。
中でも国東は品質、生産量ともにトップクラスを誇る。
全国では原木にコナラなどを使う地方もあるが、大分県はクヌギ。
この地域でも昔から山にクヌギを植えて、炭焼きやしいたけ栽培が行われてきた。
「クヌギはしいたけの発生量が多く、香りの良いしいたけができる。食べた時にクヌギ独特の香りがしますよ」と隆文さん。
近年、業務用は安価な中国産菌床しいたけの需要が増えているが、自然の中で太陽と水と木の栄養をもらって育つしいたけは、香りも歯応えも違う。
栽培には力仕事も多い。クヌギの木を伐採し、水分調整を行い、植菌(コマ打ち)した後1年半寝かせ、ほだ場に運んでしいたけを発生させる。太い丸太を抱えて歩き回ることも。収穫できるのはコマ打ちから2年後だ。
世界が注目する和食のUMAMIを代表する乾しいたけ。
でも日本の家庭では、「戻すのが面倒」などの理由で需要が減っているという。
清末さんたちは、一般の人にも生産現場を見て、しいたけに関心を持ってほしいと、コマ打ち・収穫体験を始めた。
「こんなふうに手をかけていることを、知ってもらえれば」と健二さん。
体験会では母・朝子さんが作る“しいたけまんじゅう”もふるまわれる。
ふわふわの生地に、しいたけと野菜を甘辛く炒め煮した具がたっぷり。地域のイベントなどで子供たちにも大人気のおまんじゅうだ。
原木しいたけに可能性を見出した清末兄弟。家業を未来へつなぐために生産とマーケティングに手を取り合う。