MEGURU
昔ながらの水田の景観を残していくということ
里
「風が気持ちいいんですよ。朝は鳥のさえずりで目が覚めて…」。たまたま農家民泊をしたのがきっかけで移住を決め、学習塾を主宰しながら田染荘の地域おこし活動に関わっている蔵本学さん。
田染荘は宇佐神宮の根本荘園の一つで、江戸時代からのため池を利用して減農薬の荘園米を栽培している。中世の農村景観が残る小崎地区では、景観保全と交流人口を増やす目的で、昔ながらの手植えや手刈り、手作り料理が楽しめる体験イベントを開催している。
「日本の原風景ともいうべき農村景観を見ながら、ゆったりした時間を過ごしてほしい。みんなで農作業をする楽しさも味わっていただければ」。蔵本さん自身が受けた感動をぜひ多くの人に体験してほしい。そんな思いで活動を続けている。
宇佐市院内町の山あいに広がる両合棚田。小平(こびら)と滝貞 (たきさだ)、2つの集落の間を流れる川に懐かしさの残る石橋が架かり、両岸に急斜面の棚田が連なっている。20年前、日本の棚田百選に選ばれ、秋には美しい掛け干しの風景が見られたが、高齢化や鳥獣被害などで耕作放棄地が増えていった。
この状況を危惧して、両合棚田再生協議会が発足。会長の石井一男さんはこの地で長年、しいたけと米を作ってきたが、「今はここの再生が一番の仕事」という。
地域で減農薬の両合米を栽培し、田植え体験や収穫祭を開催。空き家を改修した交流施設「むっからや」も完成した。地元の小学生や留学生も参加して、田んぼでワイワイ国際交流。地元の女性たちが腕を振るう料理も好評だ。写真を撮りに訪れてもらおうと、橋周辺に米を植え、減反の田にコスモスも植えた。
「昔のままの風景を残し、石垣が崩れたらコンクリートでなく石を積んで補修する。この自然を残していくことが私たちの生きる道です」と石井さんは胸を張った。