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海のミルクは森が育む

MV 海のミルクは森が育む

カキは栄養豊富なことから「海のミルク」と呼ばれる

山の栄養を取り込んだカキは一年で大きく育つ。

山の栄養を取り込んだカキは一年で大きく育つ。

杵築市の守江湾は、県内最大のカキ生産地として知られる。
毎年11月になると収穫が始まり、海岸沿いにカキ焼きの店がオープンする。15年前、奥井民男さんが仲間の養殖家たちと始めた「牡蠣の家」は、その先駆けだ。目の前の海から朝引き上げたばかりのカキを、炭火で焼いて食べ、持ち帰りもできる。
おまけに生産者直売なので安くて新鮮とあって、週末は早々にカキが売り切れてしまうほどの人気だ。

守江湾では昭和30年頃からカキ養殖が行われ、最盛期の昭和30~40年代には約100の事業者が操業していたという。
船大工だった奥井さんも本業のかたわら、25年くらい前からカキ養殖に参入。
当時は県外の水産加工業者への卸が専門だったが、もっと地元の人に知ってもらい、地産地消・消費拡大を目指そうと店を立ち上げた。

「守江湾には川が何本も入っているので、山からの栄養分が海に下りてきて、カキがよく育つんです」と奥井さん。
まさにこの水の循環が世界農業遺産である。

前年11月ごろから干潟域で種を育て、3月末に湾内の養殖場の垂下連(すいかれん)と呼ばれるロープにつけて、海中に吊るして育てる。カキは海中の植物プランクトンをエサに育つため、海の栄養分がとても重要なのだ。
守江湾は遠浅なので海水温が上がってカキが死滅しやすいため、11月~翌年2月上旬くらいまでに収穫を終える。「海に栄養分が多いので、1年足らずでもカキが十分大きくなる」という。

朝、奥井さんたちは養殖場へ船を走らせ、カキがびっしり連なったロープを引き上げていく。1連に70個ほどのカキが付いたロープを船に下ろすのは力仕事だ。
収穫したカキは、すぐに奥さんたちの手で選別されて店頭へ。

朝引き揚げたカキをすぐに店に並べる。

朝引き揚げたカキをすぐに店に並べる。

看板メニューは炭火で焼く「焼きガキ」だが、むき身がたっぷり入った「カキ飯」も、炊くのが間に合わないほどの人気。
濃厚なうま味と香りがあとをひく。
豊かな海と森が育てた極上のカキが味わえるのは、12月~1月。冬の海に舌鼓が響く。